絞り染は素朴なものから辻が花に見られるような複雑な絵模様を表現するものまで大変幅の広い染色法である。歴史的にも古く、正倉院に残る纐纈がそれにあたると言われている。室町時代に入ると絞り染に描き絵や摺箔を加えたいわゆる辻が花が生まれ、精巧さを内に秘めた素朴さは身分の高い人たちにも相当珍重されたようである。江戸時代になると鹿の子絞りを全面に施したきものなどが流行し、余りにも贅を尽くしたそれらはしばしば奢侈禁止令の対象にもなった。さらに木綿の流通が盛んになると有松鳴海地方を中心に抽象的、幾何学的模様を表現するいろいろな絞り染が発達した。
このように絞り染がわが国の染色を彩る上で大きな役割を果たしてきたことは疑う余地がない。そして現代でも衣料やタピストリー、小物などまで、さまざまな作品が作り出されている。
きもの美術館では、この絞り染技法を応用してきもの制作に取り組んでいる作家を取り上げ、絞り染の美しさや面白さなど、その可能性をいろいろな視点から紹介したいと考えております。ぜひご高覧賜りますようお願い申し上げます。
出品作家
石塚広、出原修子、市瀬史朗、岡本紘子、小倉淳史、木原明、榊原あさ子、新藤弘之、早川嘉英、原田弘子、福本潮子、福村廣利(五十音順)
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