四人の思いはただ一つ。
現代の人たちに気軽に一人でも多くきものを着てもらいたい。生活スタイルが洋風化し、見るものや食べるものが大きく変化しているとしても、きものに憧れている女性はまだまだいるはずだ。
そういう人たちに満足してもらえるような手作りのきものをと願って、梅・竹・菊・蘭の四君子に四人をなぞらえ研鑽を重ねてきた。京友禅の歴史と伝統を受け継いでさまざまな技法と取り組み、一人一人が作家意識を前面に押し出し、一枚のきものに季節感やそれぞれの感性を染め出そうと試みているのだ。
京都染織の底力を
京都がわが国染織の生産や流通において中心的な位置にあることは誰もが認める。京都は平安京に都が定められて以来、染織品の集散地として、また染織文化の発信基地として最も長い歴史を有しており、その歴史はそのままわが国の染織を語ってきたといっても過言ではない。しかしながら、その京都の染織も近年の呉服離れと流通機構の改善の立ち遅れ、その他もろもろの要因から、今や危機的な状況へと陥っている。この危機を突破するのは容易ではないだろうが、その一つに制作者自らがユーザーの声に耳を傾け、本当にユーザが期待しているようなきものを制作していく道を模索する手立てはあるのではないかと思う。その道のりは決して平坦ではないだろうが、京都の歴史は危機的状況を迎えるたびに、その都度時代の現実に立ち向かって新たな道を切り拓いてきたこともわたしたちに教えている。応仁の乱で焼け野原になっても立ち直ってきたし、明治維新でわが国が欧風化を余儀なくされたときも、むしろヨーロッパの文化を取り込んで新たな染織文化を生み出し、より一層きものの需要層を広げてきたのだった。ここは生産者一人一人の前向きな姿勢に期待したい。 |