言うまでも無くインドネシアは日本と並ぶ世界的な模様染めの宝庫である。中でもジャワ更紗はバティックといわれるロウケツ染で、木綿地に異国情緒あふれるアラベスク模様や幾何学模様を染め出し、世界中の人びとを魅了している。色数が多いとはいえないけれども、手描きならではの暖かな味わいがあり、模様の種類が圧倒的に多いのが特徴である。その数は、三千種とも五千種ともいわれ、多彩な模様は驚くばかりである。
この模様の多様さは、さまざまな文化圏の影響を受けてきたインドネシアの多様性をそのまま反映しているからでもある。
ジャワ更紗が一般化するのは、17世紀に入ってソガ染料が生み出されてからだといわれているが、ジャワ更紗に茶系統が多いと感じるのも、模様の多様さと相まって、その特徴が顕著に現わされているからであろう。
本展ではそうしたジャワ更紗の魅力を紹介すると共に、バティックと友禅染を融合して新たな感覚の作品作りを試みている染作品も展示し、その可能性を探ってみたい。